コーポ鵠沼A棟

今回の対象マンションは「コーポ鵠沼A棟」です。旧耐震の壁式鉄筋コンクリート造のマンションになります。依頼人は藤沢市辻堂に営業拠点を置き、湘南一帯で事業展開をする不動産会社様です。対象住宅は依頼人の所有物で、再販用に購入を検討されている時点での相談でした。

旧耐震マンションである「コーポ鵠沼A棟」は、耐震基準適合証明を取得できるか否かのお問い合わせでした。クランツ事務所には、今回のように再販業者様からこのようなお問い合わせが多いです。本来なら旧耐震マンションの場合では「耐震基準適合証明書」は発行できませんが、壁式鉄筋コンクリート造のマンションならその可能性が高く、可能であると付加価値を大きく高めることができるからです。なによりも、「耐震基準適合証明書」可能物件としてとても売れやすくなります。

上記のために適合するか否かの事前確認を数か月前に実施しました。クランツ事務所が判定依頼を受けるとまず初めに確認することは、ストリートビューやグーグルアースにて外観上の壁式構造の特徴を判定します。この段階において壁式構造であることが判定出来たら、設計図の閲覧承諾を取っていただくことを条件に適合証明発行可とします。

しかしながら上記の方法では判定できない物件の場合、実際に現地調査を実施して確認を行います。この段階において壁式構造ではないことや、壁式構造であっても耐震診断には明らかに耐えられない構造の場合もあります。このように、現地調査を実施してその案件は終わりということも少なくありません。

とにかく事前判定で可とした「コーポ鵠沼A棟」は、その後にフルリノベーションを施して販売展開の結果、新たな購入者と売買契約が締結され、クランツ事務所に正式に適合証明書の発行依頼が入りました。 今回はフラット35も同時に利用したいとのことでした。

設計図の閲覧と現地調査

コーポ鵠沼A棟

「コーポ鵠沼A棟」はその名の通り藤沢市の鵠沼海岸に位置しています。それこそ湘南バイパスの沿線上にあり、江ノ島が目の前の絶景のビューポイントにあります。建物は複数棟で構成されていて、対象住宅はA棟にあります。

まずは管理事務所を訪問して設計図の閲覧(実際はデジカメ撮影)を行います。今回は棟数が少なくすぐに対象の構造設計図を抽出することができました。 前回の「あざみ野住宅」のように大規模マンションの場合では棟数が多く、設計図も多数保管されていて特定するのに難儀をすることが多いです。

このマンションは設計図がしっかりと保管されていて助かりました。中には設計図を紛失している管理組合も少なくありません。貸出管理が緩い小さな規模のマンションほどその可能性が高いです。「コーポ鵠沼A棟」事前判定でもわかっていたことですが、現場打の壁式構造であることが確定しました。

一通り必要な図面の撮影を終わらせ、実際に現地調査を実施しました。今回は新たにフラット35の適合証明も同時に審査することになりしたので、調査にはその項目を追加して実施することになりました。年数が経過しているマンションではありますがしっかりと維持が行われていました。

現場打の壁式構造であるため、コンクリートの強度が基準値をクリアーしていることを確認する必要があります。外観や内部の調査が終わった最後に、コンクリート試験を行います。 試験には非破壊試験器(シュミットハンマー)を使用します。実施場所は対象住宅のメーターボックス内部のコンクリート壁です。

一般的には躯体コンクリートの強度試験は通常では実際に壁をくり抜いて試験所に持ち込んで「破壊試験」で確認しますが、それほど大掛かりで費用のかかることを居住中のマンションで行うことは現実的ではありません。耐震適合で採用する方法は「非破壊試験」で、実際の躯体にストレスを与えることなく実施できるジュミットハンマーが適しています。

設計図の閲覧、現地調査、コンクリートの強度試験などすべてのプロセスは滞りなく進めることができました。関係者の皆様ありがとうございました。